近年、人材のスキルを可視化しようという流れが高まっています。
とくにITエンジニアなど「他の職種の人では専門性を判断できない」分野で、強い関心が持たれています。
その最大の理由は「人材に関する多くの問題を一気に解決できる可能性」にあると言えるでしょう。
本記事では、その背景や理由の核心に迫っていきます。
なぜ、スキル可視化が注目されるのか?
近年になって「スキルを可視化しよう」というニーズが高まっています。
その証拠に、ビジネス用語として注目されているのが「スキルマップ」「スキルセット」といったスキルに関するワードです。
スキルマップとは、従業員一人ひとりのスキルや経験を可視化するために作成する一覧表です。
組織全体のスキル状況を把握し、人材育成や配置、キャリアプランニングなどに活用されます。
スキルマップには、以下の要素が記載されます。
- 従業員情報: 氏名、所属部署、役職など
- スキル: 業務遂行に必要なスキル
- 習熟度: 各スキルにおける習熟度レベル
- 評価方法: 習熟度をどのように評価したか
- 補足情報: スキルに関する資格や経験など
仕事を行うために必要な知識、能力、経験などの組み合わせのことです。 職種によって求められる専門的な知識や技術も含まれます。
スキルセットは大きく2種類に分類されます。
- ハードスキル: 資格や免許、学歴、専門知識、技術など、客観的に証明できるスキル
- ソフトスキル: コミュニケーション能力、問題解決能力、チームワーク能力、リーダーシップ、時間管理能力、ストレス耐性など、客観的に証明しにくいスキル
これらのスキル可視化の気運が高まっている背景には、以下のような要因が考えられるでしょう。
- 派遣やフリーランスなど多様な働き方が浸透
- 転職が当たり前のキャリア観が広がり人材の流動性が加速
- 在宅ワーク普及やDX化によるビジネスコミュニケーションの変化
- ジョブ型雇用によるスキル重視の流れ
こうした働き方の変化に伴い「人材のスキルを可視化したい」という需要が高まっています。
今までのメンバーシップ型雇用における「どれだけ長く一つの会社で働けるか?」という評価基準では、本当に社内に必要な人材を測れなくなっているからです。
既存社員であれば、長年勤めた実績から周りも「これだけできる人だ」と感覚的にわかりやすいものです。
しかし、中途採用希望者やプロジェクトに参加する他企業のメンバーは、実際に働いてみるまでそのスキルがわかりません。
今までの評価方法では「職務経歴書や資格」「自己申告」を頼りにするしかありません。
これでは、新しく入ってくる人材に、本当にスキルがあるかどうか判別しようがありません。
スキルがわからないため、消去法で「コミュニケーション能力がある人物」や「目立った実績がある人物」が評価されやすくなってしまいます。
そういった人物が、専門知識や経験が要される難易度の高いプロジェクトに参加しても、メンバーをまとめたり解決案を示すことができず、そこで初めて「スキルがない」と発覚します。
むしろ「感じが良い人物」「勤務経歴がある」という理由だけで、できない仕事を任されてしまい、プロジェクトを炎上させてしまう…という悲劇は、どこにでもある話です。
こうした、時代の変化に追いついてない企業の採用や評価方法として期待されているのが「スキルを可視化する」という試みなのです。
スキル可視化で解消できる企業の課題
スキル可視化は、さまざまな課題を解決する力を持っています。
たとえば、以下のような企業の課題を解決するソリューションとなりえます。
- ミスマッチ採用を未然に防げる
- ITがわからない人でも適切な評価ができる
- 適切な教育や研修を用意できる
- スキルを持つ社員を発掘できる
採用前に人材のスキルがわかれば、ミスマッチ採用を減らせます。
また、採用は「採って終わり」ではありません。
人材を定着させるため、人事評価が適切かどうかも、問われます。
中途採用者や外部メンバーだけでなく、既存社員のスキル可視化も重要です。
モチベーションの低いスキルのある人物を発掘することができれば、離職を防げるかもしれません。
また、スキルの低い社員に適切な研修や教育を施すことで、定着率を高めることにつながります。
しかし、いずれの問題解決を行うにしても「スキルの可視化」がされていないと、共通した評価ができず、話が前に進みません。
たとえば、モチベーションが低いがスキルのある人材は、往々にして「あいつはやる気がない=能力がない」とみなされがちです。
こうした際に、共通した評価基準があれば「単にやる気の問題」とわかりますが、基準がないと各々の心象により「能力が低い、スキルがない」と決めつけて話を進めてしまいがちです。
問題を見誤ったまま話を進めてしまうので、一向に解決しません。
スキル可視化は、いわば「問題を早期に特定する手段」となるのです。
エンジニアのスキルを可視化することは難しい?見える化しても意味ない?
以上のように、エンジニアのスキルを可視化することで計り知れないメリットを得られる一方で「どうやってスキルを可視化すればいい?」という声や「見える化しても意味がない」という声もあります。
実際に、スキル可視化によってミスマッチ採用を防ぐなどの恩恵を得るためには、下記のようなスキルマップ作成の課題や運用上の問題をクリアしなければなりません。
実用的なスキルマップの作成が困難
エンジニアのスキルを可視化する方法について調べてみると、HR系メディアにて「スキルマップを作成してみよう」との紹介が数多く存在します。
スキルマップとは、従業員のスキルや経験を可視化するために作成する表形式のツールのことです。
多くのスキルマップ作成方法で紹介されている例を見ても「これだけの項目では本当の実力はわからないのでは?」「項目名の設定が大雑把すぎないか?」など、実用的なものを作れるかどうかに疑問が残るものです。
また、大前提として「スキルマップ作成者が、網羅的に多岐に渡る業務に対応できて、なおかつ自分のスキルを言語化できる」という条件も要されます。
これには、
- スキルマップ作成者が十分に実務経験がなければそもそもの必要なスキルの判定ができない
- 経験豊富でスキルがある人材でも、自分のスキルを余すことなく言語化することが困難
といった課題が潜んでいるからです。
「スキルマップを作っても意味がない」という声もあります。
そういった声も「ただ形だけ真似したスキルマップを作って終わり」「現場実態と乖離したスキルマップを埋めることに意義を見出だせない」など、考えなしに「スキルを可視化すればいい」という手段のみが先行してしまい、実用的かどうかを十分に検討しないがゆえに起こるものです。
作成されたスキル項目に偏りや漏れが生じやすい
仮に実用的なスキルマップを作成できる人物が社内にいたとしても、作成されたスキル項目に偏りや漏れが生じやすいという点にも注意です。
たとえば、営業系人材のスキルマップにおいて、対客スキルとして言葉遣いの丁寧さなどのスキルが問われる割に、営業先を見つける分析能力、契約締結までに必要な事務手配能力など一切問われていないなどの例があります。
これは、作成者本人が「営業スキルは対客スキルとして、言葉遣いの丁寧さなどコミュニケーション能力が大事」と思い込んでおり、実際に業務中に無自覚に用いている本質的な営業スキルであったり、自分は行っていないが裏で他人が支えてくれているスキル領域に関心を払っていないなどの要因により、往々にして生じやすい偏りです。
スキル可視化の最たる目的である「ミスマッチ採用を防ぐ」を果たすためには、社外の状況や業界共通の常識などを踏まえたスキルマップを作成しなければなりません。
そういう意味でも、自社内だけでスキルマップを作成して、その内容に偏りがあることに気づけなかったり、社内でしか通用しない独自のスキルばかりが設定されている状況は、スキル可視化の本来の目的を果たせずに終わるリスクを高めてしまうのです。
本来、必要ないスキルまで組み込まれている
偏りや漏れが生じることに加え、必要ないスキル項目まで過剰に設定されやすいことも、スキルマップ作成の難しさです。
スキルマップを作成する際、つい「あれもこれも…」と考え、思いつく限りのスキルを項目として挙げてしまいがちです。
しかし、これには以下の欠点が存在します。
- 人材へ求めるスキルレベルの要求が過剰になる
- スキルマップ入力に時間がかかり記入者の負担が増える
- 業務に不要なスキルが評価基準となりミスマッチを生む
必要ないスキルまでスキルマップ項目に加えられると、求める人材レベルが不相応に高くなってしまう懸念があります。また、業務遂行に不要なスキルが多数盛り込まれてしまうと、本質的でないスキルが評価基準となってしまい、人材を適切に評価する運用が難しくなります。
ITエンジニアのスキルを可視化する際に、業務に必須でないスキルが問われるスキルマップも多いです。
たとえば、技術とは関係ない「勤務態度やコミュニケーション能力」ばかりが問われるスキルマップですと、エンジニアの技術開発力ではなくコミュニケーション能力ばかりが評価され、技術については軽視される…といった形になります。
あるいは、テスト問題を解くだけのような設問ばかりでスキルを判定し、実業務に本当に必要なスキルや経験が軽視され、現場実態とギャップの多いスキルマップが評価基準になってしまう例もあります。
可視化されたスキルを適切に評価・運用できる人物が少ない
スキルマップを作成したとしても、今度は「スキルマップに準じて人材を適切に評価できる人物はいるのか?」という懸念も出てきます。
適切な評価ができる人物がいない場合、たとえば「スキルマップの合計スコアが高い人物が一番優れていると軽率な判断をする」「スコアが低い人物の評価を不当に下げるだけの用途に用い、研修や教育用途に活かさない」など、「スキルマップのスコアが高い=優れている、スキルマップのスコアが低い=劣っている」という短絡的な判断を招きかねません。
また、社外から人材調達をするにあたって「とにかくスキルスコアが高い人物が欲しい」とオーバースペック人材ばかり追い求めたり、逆に「スキルスコアとしては平均でも自社の業務を行う上で実力は十分な人物」を見落としてしまうなど、スキルマップに沿った評価基準を適切に設定できなければ「スキルマップのスコアの高い/低い」だけで判断してしまい、採用や人事の問題の解決に至ることはできません。
前述の「実用的なスキルマップを作るのが難しい」という問題に加え、「仮に実用的なスキルマップを作れても、運用するのが難しい」という問題が、よりエンジニアのスキル可視化を困難にしている要因だと言えるでしょう。
時系列が考慮されてないためスキルが陳腐化する恐れ
抜け落ちがちな視点ですが、スキルマップは「作って終わり」でなく「作った後も定期的な更新」が重要となります。
とくに変化の激しいIT/WEB業界では、数年前のスキルや知識が時代遅れになってしまうことも珍しくない業界だからです。
ところが、一回作成したスキルマップの内容を更新しないまま運用し続けると、時代に合ってないスキル項目が評価基準となってしまい、社内全体で最新のスキルや知識が更新されないというリスクにもなります。
実用的なスキルマップの作成難度、適切なスキルマップの評価・運用の難度に加え、業界動向に合わせたスキルマップ更新の必要性もITエンジニアのスキル可視化を困難にする要因の一つです。
Brightにおけるエンジニアスキル可視化の取り組み
最後に、弊社が提供する「Bright」における、ITエンジニアやその他のIT人材のスキル可視化にあたり、どのようなスキルマップ作成方法が行われているのか、また可視化スキルの信頼性をどのように担保しているのか、ご紹介していきます。
経験者によるディスカッションを通した本格的なスキルマップ作成
Brightでは実務経験のある人物同士の綿密なディスカッションを通して、スキルマップ作成を行っています。
※Bright内ではスキルマップのことを「スキルパネル」と呼びます。
そのため、現場で必要とされているスキルが網羅されており、スキル項目の多くが「実際に業務経験がなければわからないもの」で構成されているため、それだけで「実務経験があるかどうか?」が判別できる設計となっています。
たとえば、プログラミング言語Elixirのスキルの分類だけで見ても「プログラミング言語本体」「テスト・デバッグ」「環境構築」「ライブラリ」「設計・開発」「データベース・API」など、実務を想定したスキル分類に設定されていることがわかります。
現場実態に則した過不足のない実用的なスキル項目
Brightのスキルパネルでは、スキル項目の設定も「ただ難易度を上げるだけ」「項目を増やせばいい」というものではなく、見習い~ベテランまで段階毎に合わせた過不足のないスキル設定が為されています。
たとえば、プログラミング言語ごとの入門スキルパネルでは「個人で簡単なWeb+DBアプリが作れる」「Web+DBアプリ開発チームに参画できる」「サポートありならWeb+DBアプリをチーム開発できる」といったように、個人開発~チーム開発と問われるスキルがステップアップして設計となっています。
また、一言で「ITエンジニア」「プログラマー」と言っても、実際の職務範囲や求められるスキル・知識は多種多様な実態にも応えている点に注目です。
Brightのスキルパネルでは、エンジニアのスキル区分も下記画像のように「プログラミング言語別」に設定されつつ、Web開発・スマホアプリ開発・AI/ML開発と進みながら、応用編以降はプロジェクトリーダー~プロジェクトマネージャーなどのより上位職のスキルを問う設計となっています。
また、一般的に「ITエンジニア」「プログラマー」と呼ばれる職務にも、実際にはサーバーサイド側の技術や知識が問われる「インフラエンジニア」としての役割を担うこともあります。
インフラスキルに関しても、主流のクラウドサーバーである「AWS(Amazon Web Services)」「Google Cloud」「Azure」を主軸としたスキルパネルの実装が予定されています。
以上のように「ITエンジニア」と一言で言っても多岐に渡るスキル領域を細かく区分しながら、初学者からベテランまで本当に実務に必要なスキルを判定できるという点で、Brightのスキルパネルは実用的な設計になっていると言えます。
作成したスキルパネルを実際に運用し効果の検証を行っている
「スキルマップを作成して記入しても、結局は机上の空論で終わるのでは?」という懸念の声もあります。
Brightでは机上の空論に終わらないよう、作成したスキルパネルの入力を見習い~実務経験者と幅広く記入してもらい、その上で採用や人材配置に活かせるかどうかまで検証を行っています。
というのも、Brightの元をたどれば「採用広告費ゼロで人材採用を達成したノウハウをSaaS化」「コミュニティに集まった人物にスキルパネル入力をしてもらいフィードバックをもらう」といった開発スタイルが行われていたからです。
その延長線として、社内のエンジニア調達や人材評価を行うためにもスキルパネルがしっかり活用されているわけですから、第一に「自社自体が自社開発プロダクトのユーザーでもある」わけです。
業界動向の変化や人材の成長を考慮したスキルパネル更新体制
スキルパネルは「作って終わり」「記入して終わり」ではありません。
Brightの特徴的なUIとして「スキルパネルの更新状況を時系列で可視化できる」という機能があります。
前述のスキルパネルを運用する過程で得たフィードバックから、新たに必要とされるスキルがスキルパネルに追加されることがあります。
その際、一時的にスキルパネルのスコアが下がってしまうため、「一度入力したから終わり」と慢心していると、日々のスキルアップに対応できなくなってしまうわけです。
逆に、最初のスキルパネル入力時にスコアが低い者でも、日々スキル入力を行い続けることで自身の成長が実感しやすくなります。
変化の激しいIT/Web業界では、必要とされるスキルや知識のトレンドも日々移り変わるものです。
古い知識やスキルからアップデートできないままでは時代遅れになってしまいますが、Brightでは定期的なスキルパネル更新が行われます。
そのため、定期的にBrightのスキルパネルを確認しておくだけで、最新のスキルについての学習やスキル更新を自発的に行える体験が提供されます。
Brightでエンジニアのスキル可視化を体験してみよう
以上のように、Brightでは困難とされている「スキルの可視化」に取り組み、それをSaaSとして多くのユーザーに提供しています。
無料トライアル機能でも、主機能となる「スキルパネル」が制限なく自由に活用可能ですので、ぜひ、Brightを通して良質なスキル可視化を体験してみてください。